DX(デジタルトランスフォーメーション)は、これまで以上の利益率を今よりもずっと少ない人数や工数で実現し、競合する企業に打ち勝つ為に行なう施策です。
そのために各企業はシステムやITツールを導入している訳ですが、実はシステムやITツールを導入するだけではDX化による効果は限定的で、本来のDXの目的は達成することが出来ません。
DXの本質はトランスフォーメーション、変革です。
デジタル化だけでなく、プロセスに変革を起こすからこそ、DX化を成し遂げることが出来るのです。しかし、残念ながら多くの企業では、DX化の本質を完全に誤解している現状があります。
そこで本記事では、DXとは何の為に行なうのか?中小企業が生き残るために不可欠な本質のDXとは何か?についてお伝えします。
BPR無きDXは、効果の出せるDXにあらず
誤解を恐れずに伝えます。
DXを成し遂げるためには、ビジネスプロセスそのものを一度ぶっ壊し、デジタル化を取り入れつつプロセスを再構成・再設計する必要があります。
既存の非効率なプロセスをそのままデジタルツールに乗せ換えるだけでは、真の効率化や競争力向上は不可能だからです。
多くの企業が行なっているシステム導入やITツールの導入は、ほとんどがデジタル化レベルの改善です。BPRまで確実に実行し、利益率を大幅に改善している企業は多くはありません。
デジタル化だと効果はあまり大きくないとはいえ、大企業であれば社員数が多いので、デジタル化するだけでもそれなりにコストの削減は出来ますし、売上にも好影響を出せます。それらをもってDXによって効率化したと言えてしまう、という側面もあります。数百人から数千人レベルで社員数のいる大企業だから、成せる効果の出し方といえます。
しかし、中小企業においてはシビアな現実しかありません。限られた資本とリソースという制約の中で、劇的にコストを下げつつ売上を増加させる必要があります。大企業と同じようにITツールを導入して1日1時間効率化したところで、社員数が少なければ効率化のインパクトは大きくなりません。
そこで、必要になるのがBPR※(業務プロセス改革)です。既存のプロセスを前提とせず、デジタル化をベースに最も効率的なプロセスをゼロベースで再構築する方法です。
※BPR=Business Process ReEngineering
劇的な効果を生むBPRとは?
BPRは単なる業務改善や効率化とは異なり、業務プロセスそのものを根本から見直し、劇的な効果を生むことを目的とした手法です。生産性向上やコスト削減、さらには新たな価値創造の為の非常に強力な手段として、多くの企業で注目されています。
しかし、BPRの効果を最大限に発揮するためには、従来のやり方やプロセスに固執しない柔軟な視点で、ビジネスプロセス全体を再構築する必要があります。
その時に核となる考え方が、「ゼロベース思考」です。
従来より存在するプロセスを改善するという考え方ではなく、一旦すべてを白紙に戻し、最も効率的で効果的なプロセスを再設計します。このゼロベース思考でのプロセス再設計により、従来の方法では気付かなかった無駄や重複作業を排除します。その結果大幅なコスト削減や生産性向上がもたらされます。
たとえば、ある企業が商品受注の業務フローをBPRによって再設計しました。プロセスを大幅に変更し、これまで手動で行っていた作業をITツールで行なった結果、受注から出荷までのリードタイムが50%削減されたケースがあります。こうした根本的な変革こそが、BPRの目指す劇的な効果です。
このようにゼロベースでプロセスを再構築し、デジタルツールによって再構築したプロセスを活用することで、単なる効率化を超えた本質的なビジネス変革を実現する手法がBPRです。
DXとBPRはセットで実施するべき
DX化を行なう際には、必ずBPRを一緒に行なう事をおすすめします。
その理由は明確で、ITツールを導入する際もBPRを行なう際にも、どちらも業務プロセスを確認、設計するという作業を行なっているからです。DX化とBPRを別々に行なう事は、こうした作業を別タイミングで重複して実施することになり、工数の無駄になります。
各業務毎のフローを細かに確認し、そして再構築するためにそれなりの作業工数が発生するのが「業務プロセスの確認、再設計」です。それを別タイミングで重複して作業するのは無駄以外の何者でもありません。
低コスト化、売上増加を実現し、競争力を向上させる為に必要なのは、単なるITツールの導入ではなく、ビジネスプロセスの変革です。その目的を果たす為には、DXとBPRをセットで行なう必要があります。
コスト削減は単なる支出の抑制ではなく、価値を生み出すプロセスにリソースを集中させることが重要です。例えば、紙→デジタルでデータのアクセス性を高め情報共有のスピードを向上すれば、効率が上がり、意思決定が迅速化されます。こうした考え方での削減は、新しい価値を創り出す原動力になります。
— 三浦ふみゆき|業務改善の鬼 (@miura_dx) October 7, 2024
例えば低コスト化を改革レベルで実行するという事は、これまで5つの工程が存在していたプロセスを、1工程だけで済ませて業務工程を完了させるという事です。取引先からのインプットが紙しか無いのであれば、取引先へもデジタル化を促し、インプットそのものをデジタル化して、あり得ないくらいプロセスを削減してしまう。そういった考え方もDX化には必要です。
(ひとりだけ勝つのではなく、関係する会社全員で勝ち抜こう、という考え方ですね)
売上の増加という側面では、集客、営業にデジタルやITツールを取り入れるだけで無く、成果が最大化するようにプロセスを設計して最適化します。例えばホームページから集客した見込み顧客を、MA(Marketing Automation)を使って自動的に濃い見込み顧客へと育てれば、今すぐ顧客に対してセールスが出来るようになるため、クロージング成功率も大きく改善出来ます。
また、CRM(Customer Relationship Management)によって、既に接点のある顧客や見込み顧客を掘り起こすことが出来るので、適切なタイミングで新規の営業チャンスやクロスセル・アップセルのチャンスを創り出す事も出来るようになります。
営業活動を仕組み化し可視して効率化するSFA(Sales Force Automation)ツールを導入し、パフォーマンスが最大化するように営業プロセスを変革すれば、営業効率も大幅に改善出来ます。
このように、ITツールを導入しつつ業務プロセスに改革を起こすBPRを行うことで、最小限の工数で最大の効果を生み出すことが出来るようになります。
DXを誤解する企業が増えている
しかし、残念ながら多くの企業が、「とりあえずITツールを入れればDXになる」と考えている現状があります。
特に先述したように大企業であれば、デジタルを取り入れたりITツールを入れるだけでもある程度の効果は出せます。その後、改めて二次三次のDX化プロジェクトで大きな工数とコストをかけてDX化を推し進めることも可能でしょう。
しかし、中小企業にはそんなマンパワーも資本もありません。適切なDX戦略を立て、一歩ずつ間違いなく効果の出せる本質的なDX化を推し進めてゆかねばならないのです。
DX化を誤解しつつも、分かったような体(てい)の情報に踊らされて、とりあえずITツールを導入してしまう中小企業が生まれないためにも、我々ももっと頑張ってゆかねばと感じているところです。
”失われた35年”を、今後も続けて行くわけにはいきません。様々なSaaSツールや生成AIが生まれ、ビジネス環境が大きく変革している今だからこそ、DXを通じて当社も含めた中小企業から日本を変えてゆきたいのです。
>>>中小企業のDXが進まない理由は人材不足では無い!本当の理由と対処方法
DXの本当の目的
「もう分かってるよ」と言われるかも知れませんが、なぜDX化しなければならないのか?、DX化を行なう本当の目的を腹落ちさておいてください。DX化のプロジェクトを成功させるためには、社内でリーダーとなるあなたの理解とビジョンが絶対に必要になるからです。
中小企業がDXを推進しなければならない理由としては、中小企業が直面している、もしくはこれから直面するであろういくつかの課題に対処する為です。では、その課題とは一体何か?
3点あります。
【中小企業がこれから直面する課題】
1.労働力不足による生産性低下
2.競争の激化
3.顧客のニーズの多様化など
これら3つの課題を、以下で一つずつ解説します。
1.労働力不足による生産性低下への対応
既に日本国内においては人手不足が深刻化していて、これからさらに人手・労働力不足に直面する事になります。2024年春の大卒就職率が98.1%で過去最高であることを考えみると、完全な売り手市場。資本力のある大企業はあの手この手を使い採用を活発化しています。
中小企業にとっては優秀な人材の確保が、ますます困難な状況になっています。原材料費高騰や人件費増という厳しい状況にもかかわらず、中小企業は従来の方法で人手を増やすことが難しくなっており、より魅力的な労働環境を作らねば、勤務先として選択してもらうことが出来ない状況がやって来ています。
そして、これらの課題は景気のように時間が解決するものでも有りません。労働力・人手不足という事実は日本の労働人口が減少している事を考えると、今後ますます悪化することが明白です。(以下図のピンクのグラフが15才~64才)
人手・労働力不足による生産性の低下は、中小企業にとって深刻な課題です。既に人手・労働力不足による倒産が増加しているように、今後その深刻度合いはますます増してゆくことが予測されています。
人手・労働力が不足すれば、より高い給料で人材を募集する必要が生じ、更なる人件費増に直結します。この課題に対応するためには既存の労働力を定時内で最大限活用するだけで無く、生産性を可能な限り高めて出来るだけ少ない人員数で最大のパフォーマンスを得られるようにする必要があります。
そのための手段としてDX(デジタルトランスフォーメーション)があります。DXを進めることで、業務の自動化や効率化を図り、少ない労働力でも高い生産性を維持できます。また、デジタル化によって柔軟な働き方を実現することで、優秀な人材の確保や離職率の低下にも寄与するでしょう。
2.競争の激化への対応
インターネットを介したサービス提供や、新規見込み顧客の集客が当たり前になりました。ビジネスの競争は地域や国という垣根が無くなり、グローバル化が加速しています。日本においてもGAFAMをはじめとした、世界中のあらゆる企業が進出し、中小企業は厳しい環境に直面しています。
日本市場へと進出しているグローバル企業は、最新のテクノロジーを活用し効率化やコスト削減を進めています。それだけに留まらず日本の各企業もDXを意識し、効率化やサービスの差別化競争が激しくなっています。
そのような競争環境の中において、中小企業が生き残ってゆく為には、それらの企業よりも効果の高いDX化を行ない、高利益を出せる筋肉質な体質に変革するしか有りません。従来通りのビジネスプロセスを継続する事は、競争相手に対して生産性や品質・価格など、全て遅れを取るリスクが高まります。
DXを通じて業務効率化や製品・サービスの品質向上を図ることで、競争力を強化し、顧客にとって今以上に魅力的な提案やサービスを低価格で提供することが出来ます。また、DX化によって得られた知見やデータ、高効率な体質を最大限活用することで、新たな価値を創造し市場での競争優位性を確立できます。
3.顧客のニーズの多様化への対応
顧客ニーズが多様化する中で、従来の一律的なサービスや製品提供では競争力を保つことが難しくなっています。DXを活用することで、顧客データを分析し、個別化されたサービスや製品を提供できるようになります。
たとえば、顧客の購買履歴や行動データを基に、パーソナライズされた提案を行うことで、顧客満足度を高め、競合他社との差別化を行なう事も、売上を最大化することも可能です。過去のデータから顧客の在庫が切れそうになる頃に、自動的に商品を提案できるような仕組みを作り、受注を確実化するのも良いでしょう。
BPR(業務プロセス再設計)時に忘れがちで、影響が大きいのが”顧客の視点”です。自社都合だけでなく、顧客がどのような体験を望んでいるかを考え、それに沿ったプロセスを構築することで、より高い成果を得ることができます。BPRの前には顧客も従業員も、しっかりとヒアリングを行なう事が大切です。
— 三浦ふみゆき|業務改善の鬼 (@miura_dx) September 28, 2024
DXを通じてさまざまなデジタルデータを収集・分析することで、市場のトレンドや顧客のニーズの変化をいち早く捉えることができます。これにより、顧客ニーズに適した新製品やサービスを迅速に展開し、競合他社よりも早く市場に対応できるようになります。特に中小企業にとっては、スピードと顧客毎にサービスを個別にフィッティングさせる事が競争力の源泉となります。
DXは中小企業が生き残るために必須な対応
とどのつまり、DX化は日本企業の生き残りを懸けた競争に打ち勝つための戦いだ、という事だと分かります。少し大げさに言えば、インターネットによって拡大したグローバル競争で勝ち抜き、今後も豊かな国日本であり続けるための競争だという事です。
そして、そのDX化を行う為に”絶対に”やるべき事はBPRであり、BPRを具体的に説明すると、
そもそもそのプロセスは何なのか?本当に必要なのか?をゼロベースで見直すこと。
最小の労力で最大の効果が出せるプロセスへと変革すること。
であり、無駄なコストを抑えてどこまで高い価値のサービスや製品を提供出来るか?を問いただし、答えを出すことです。
つまりDXは、「何をデジタル化するか」ではなく、「どのようにビジネスプロセスを根本的に改善し、最小コストで最大の成果を出すか?」を実践することだと言えます。
BPRを伴うDXが本当の価値を持つ
本当に意味のあるDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現する為には、単なるデジタル化やITツールの導入に留まらず、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)によってビジネスのプロセスや業務のあり方を根本から変革する必要がありました。
BPRを通じて業務の無駄や非効率を見直し、最適化することで、デジタル技術の持つ力を最大限に引き出すことができます。
BPRを行わないままDX化を進めても、業務プロセスそのものは非効率なまま残ります。アナログな業務にフィットしたプロセスだと、ITツールの導入が逆に新たな手間を生む可能性も出てきます。BPRによって業務プロセスに変革を起こし、最適な形に整えることで、デジタル技術の導入が組織全体の生産性向上と競争力強化に直結するのです。
ある小売企業で行なったDXを例に出しますが、在庫管理システムを導入する際にBPRを行い、店舗での商品補充や在庫管理のプロセスを見直しました。従来は各店舗で在庫状況を人間が確認し、必要な商品をシステムへ入力して発注を行なっていたので、毎日かなりの手間がかかっていました。
そこで、業務プロセスをゼロベースで変革し、新たな在庫管理ツールを導入しました。その結果、全店舗の在庫状況をリアルタイムで把握でき、過去のデータと状況から自動的に最適なタイミングで商品が発注される仕組みを構築しました。このシステムの稼働によって過剰在庫や欠品が減り、在庫コストが20%削減されました。また、欠品による販売機会損失も減少し、売上が15%増加しました。これにより、全体の利益率が向上し、企業の経営効率が大幅に改善されました。
このように、DXはBPRを行うことで初めて本当の効果を発揮します。業務の流れを根本から見直し、効率化することで、DX化の恩恵を最大限に受けられるようにしましょう。
まとめ
”DX化”とは、単なるデジタル化やITツールを導入することではありません。業務の流れを根本から見直し、より効率的で付加価値の高い業務プロセスへと再構築することです。
そのために、BPRとDXをセットで行うことが不可欠。どちらが欠けても十分な効果を出すことが出来ません。
BPRとIT・デジタルの活用を組み合わせ、業務プロセスを変革することで企業は競争力を高め、持続的な成長を実現することができるのです。
表面上のDXに騙されること無く、本当のDXによって高い利益率を実現してゆきましょう。
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